質の良い米を追求し、常に進化している台湾の米作り。台湾で栽培されている主な品種について今回はもち米について紹介する。台湾では、日本で食べられているもち米(短粒種)のほか、細長いインディカ種も栽培されている。
短粒種もち米―ふっくら丸く季節のイベントに欠かせない
もちや白玉、八宝飯(中華おはぎ)など、お祝いや節句に出される食べ物には、ふっくら丸いもち米が重要な役割を果たしている。またもち米の中で最もポピュラーなものがこれで、日本でいう「もち米」はこの種類を指す。
もち米は台湾の農村部の食文化を代表する重要な食材である。四季折々の節句やお祝いごとのたびに、お婆ちゃんたち、お母さんたちがもち米でさまざまな菓子を作り、神への供え物とすることから、台湾ならではのもち米文化が生まれている。端午の節句にもち米を使って包むちまきには、「粽」と「中(合格する)」の音をかけて、試験に合格するという願いが込められている。また、おもちを表す「年糕」には、「糕」と「高」が同じ発音であることから、「年年高升、四季平安(毎年昇進し、いつも平安でありますように)」との比喩(ひゆ)が込められる。このように、もち米には食だけでなく奥深い文化的な意義もあるのである。
各種のもち米の中でも、さまざまなメニューに応用できる短粒種は、丸みを帯び、味は甘く、温かくても冷めてももっちりした食感を楽しめる。甘酒や酒かすから白玉、ちまき、甘いおもち、中華おはぎ、甘みのある粥などデザート感覚の甘味から、油飯(中華おこわ)、糯米腸(もち米の腸詰め)、中華ちまきなどさまざまな料理に変身する。
長糯米―程よい歯ごたえのもっちり感
もち米は胃弱などによるむかつきや、食欲不振を和らげる作用がある。長めに水につけ、しっかり水加減を守ることで、歯ごたえのいいもち米を炊くことができる。
もち米は白米と見た目も味わいも違い、はっきりと区別することができる。長糯米は台湾で「秈米」とも呼ばれ、細長い形で白色不透明、粘り気は強い。特に飯団(台湾風おにぎり)や中華おこわ、中華ちまき、甘酒、白玉、鹹米糕(煮込んだ豚モモをかけて食べる白飯)、珍珠丸(飲茶に出てくるもち米肉団子)などの料理に適している、また玄米の状態では玄米茶にも使われる。
中国古代の医学書には、長糯米を普段から食べると、胃弱によるむかつきや、食欲減退、神経衰弱、筋肉の無力感、虚弱体質や神経の疲労などの症状改善を助けると記載されている。長糯米には意外にもこんなに大きなパワーが秘められているが、消化が遅いため食べるのは適量にとどめておいた方がよく、胃や十二指腸など消化器の炎症のある患者には適さない。
黒糯米―滋養たっぷりの古代米
いわゆる「紫米(黒米)」のことで、古代には皇帝が食したという貴重な米だった。健康への関心が高まる現代でも、再び滋養によいとして人気が高まっている。
成分にはビタミン群、ミネラル、鉄分、赤ワインにも含まれるアントシアン系の色素と4種の必須アミノ酸が含まれ、栄養価が高い。6月と11月の二期作であるが、栽培が比較的難しく、1ヘクタール当たりの生産量は一般のイネの2分の1以下。面白いことに、若い稲穂は緑色で、成熟が進むと暗紫色に変色していく。
カロリーは白いもち米より低く、台湾風おにぎりや東南アジアのデザートなどに使われる。また、ビタミンAとE、ナイアシン、カロチン、リン、鉄、マグネシウムが豊富に含まれるため、高齢者や妊婦、骨折した患者や貧血の人の栄養補給に適している。軽めに洗うと、栄養分の流出を防ぎ、1時間以上浸けることで、粒立った歯ごたえが味わえる。
産地は花蓮県寿豊郷月眉村が最多、同県光復郷でも少量が栽培されている。
紅糯米―先住民族の命の糧
先住民族のアミ族は、冠婚葬祭や大事な祭りのときにはいつも蒸した紅糯米を用意する。
赤く光沢があり、いわゆる香り米(ジャスミンライス)の一種で、花蓮県光復郷のアミ族の伝統的な農作物である。「紅粟米」とも呼ばれる。1年に1回、7月が収穫期。株が高く倒伏しやすいほか、穂が長く栽培が難しいため、1ヘクタール当たり2,000キログラム前後しか収獲できない。栽培には時間と手間がかかるために、アミ族は冠婚葬祭や祭りのもてなしの際にのみ食べ、普段はあまり口にすることはない。
成分にはビタミンAとE、カロチン、鉄、たんぱく質などが一般の白米より豊富に含まれ、目によく、女性にもやさしい。蒸した米「hakhak」として食べるか、もちにして食べる。「hakhak」を臼でつくと「durun」、つまりもちになる。
最近の健康ブームで紅糯米も人気となり、粥や八宝飯の材料に使われ、供給不足気味となっている。